Transitions to sustainable futures.
サステナブルな未来へのトランジション
サステナブルな世界をどうつくるか?
世界はいま臨界点を迎えています。私たちがこれからの数年間にとる行動次第で、地球の未来が左右されてしまうほどに。しかし、直面している問題は大きくかつ複雑で、そう簡単に最善策は見つからないでしょう。
だからこそ、新たな方法でこの問題に捉え直す必要があります。
トランジションという見方
このウェブサイトは日立製作所研究開発グループとTakramが共同で制作したリサーチに基づいています。ここでは、サステナブルな世界をつくるために、私たちが起こすことのできる9つの「トランジション」について説明することを試みています。「トランジション」とは、ある状態から別の状態へ、徐々に、しかし前に向かって変化していくこと。ここでは「社会、政治、経済のシステムが別のものへと移行すること」を指しています。
トランジション思考の力
未来の世界を想像するのはそう簡単ではありません。第二次大戦、ソ連の崩壊、明治維新による近代化……それまでの世界がひっくりかえる転換が起きたとき、その後の生活がどうなるかを想像できた人はほとんどいませんでした。
しかし、その転換をひとつの移行、「トランジション」として捉えることで、全体像をより把握しやすくなるでしょう。いかにサステナブルな未来を構築するか、実践的かつ具体的なステップを考えられる視座が生まれるからです。
— Terry Irwin, Director of the Transition Design Institute‘When you are forecasting a future, you’re thinking within the paradigms that you’re already embedded in. Your social, political, and economic paradigms and current worldviews. All of which are part of the problem, because all of those paradigms are inherently unsustainable in the long term.’
未来を予測するとき、私たちは既存のパラダイムのなかで考えがちです。社会的、政治的、経済的な枠組み、そして現在の世界観までも。しかしこれらのパラダイムこそが、すべて問題の一部なのです。 なぜなら、これらは本来長期的には持続不可能なものばかりですから。
Crises showed us that, when we act together, rapid, multi-dimensional transformation of the way we live is possible.
共に行動すれば、私たちの生活を迅速に、そして多次元的に変革することができます。私たちは2020年に起きた危機からそのことを学びました。
転換点としての2020
2020年は危機の一年でした。新型コロナウイルスの感染爆発は、世界経済のみならず、人々の心身の健康にも計り知れない混乱をもたらしました。さらには山火事、異常気象、紛争、飢饉、政治的混乱などにより、世界各地で壊滅的な被害が発生しました。これらの問題はいずれも互いに関連しており、私たちがいま直面する課題のスケールと緊急性の高さを物語っています。
一方で2020年は、私たちが一丸となって行動すれば、信じられないようなことが達成可能だと示した年ともいえます。
サステナブルな未来をつくることも同様です。さまざまな側面で私たちの生き方を変えることは可能なのです。しかし、その達成のためには、社会、産業、コミュニティ、個人など、あらゆるレベルで断固とした行動をとる必要があります。
プロジェクトの歩み
このプロジェクトは下記のリサーチに基づいている。
の個人・団体
の鍵となるフレームワーク
のサステナビリティのリーダーへの対話とリサーチ
Arup、Dan Hill、Ellen MacArthur Foundation、Forum for the Future、Human After All、地球環境戦略研究機関(IGES)、国際エネルギー機関(IEA)、IPBES、気候ネットワーク、自然エネルギー財団、Terry Irwin、吉村 有司
Transitions
トランジション
Degenerative → Regenerative
IPBES
私たちは今でも、地球を搾取するための資源として扱っています。自然が継続的に再生できるような暮らしをするにはどうしたらいいのでしょうか?
Zero-sum → Balanced
ARUP
環境保護と人間の繁栄の間には必ずトレードオフがあるのでしょうか?
Mechanistic → Systemic
Forum for the Future
世界は互いに影響を及ぼし合うシステムで構成されています。このことは、私たちの行動にどのような影響を与えるのでしょうか?
Fast → Slow
Dan Hill
19世紀から20世紀にかけて、私たちの経済や文化は急速に加速しました。もし今世紀はゆっくりとした生き方を受け入れたらどうなるでしょうか?
Profitable → Purposeful
Human After All
企業は利益を超えたもののためにも存在できるのでしょうか?
Fossil → Renewable
International Energy Agency
化石燃料から再生可能エネルギーへの転換は、何十年も前から急務とされてきました。どうすれば最終的に実現できるのでしょうか?
Extractive → Just
気候ネットワーク
搾取的な慣行から脱却して、すべての人にとって心地よい公正な社会を構築するにはどうすればよいでしょうか?
Fossil → Renewable
自然エネルギー財団
再生可能エネルギー社会への最善の道は国や地域によって異なります。日本の道筋はどのようになっているのでしょうか?
Centralised → Distributed
吉村有司
地域や人に権力を分散させることで、私たちはいまよりもっと多くのことを達成できるのではないでしょうか?
Zero-sum → Balanced
IGES
人間と自然がともに繁栄するために、デジタル技術はどんな役割を果たせるのでしょう?
Linear → Circular
Ellen MacArthur Foundation
Currently under preparation.
Zero-sum → Balanced
ゼロ・サム → バランス
Zero-sum → Balanced
ゼロ・サム → バランス
While technology will not create a balanced world on its own, it may have a crucial role to play in this transition.
テクノロジーだけでバランスのとれた世界をつくることはできません。けれどデジタル技術は、トランジションにおいて重要な役割を果たすかもしれません。
The organisation
地球環境戦略研究機関 (IGES)
地球環境戦略研究機関 (IGES)は、日本政府のイニシアティブと神奈川県の支援により設立された機関です。電化やデジタル技術の発展を捉えて、持続可能な社会への移行に向けた研究や政策立案を行っています。
企業や社会が無制限に成長を追求すると、結果一部の人にしか利益を得たらしません。首都圏を中心とした都市部と地方部の格差拡大が懸念される日本において、この問題は特に深刻だとIGESは考えています。
Key concepts
デジタルトランスフォーメーション
デジタル技術を使って、労働集約的に行われるサービスやビジネスを自動化すること。
デジタル経済
これまでよりはるかに高い効率性を実現し、同レベルのサービスをより低いコストで提供する、デジタル技術から生まれる新しい経済。
エネルギーの電化
例えばガソリンエンジン搭載自動車から電気自動車への移行など。
Key frameworks
A PROSPEROUS NET-ZERO
Created based on the conversation with Akihisa Kuriyama, Policy Researcher at IGES豊かなネットゼロ社会
IGESは、温室効果ガス排出ネットゼロを達成した社会は豊かな社会である主張しています。そのビジョンには、 都市機能の集約化 、循環型経済、異常気象に対する回復力の向上などが含まれます。
DIGITAL TRANSFORMATION
Created based on the conversation with Akihisa Kuriyama, Policy Researcher at IGESデジタルトランスフォーメーション
この移行は、社会レベルでの電化と脱炭素化が鍵を握っていますが、それは私たちが利用するシステムやサービスのデジタル化を導くことにもつながります。
Transition in detail
IGESは、サステナブルな世界に移行するための中心にデジタルトランスフォーメーションがあると捉えています。
Transition pathways
SDGsのような取り組みは、既存のビジネスモデルを中心とした産業を根本的に変革するという点では効果的です。一方で、生産やサービスのデジタル化、築年数の古い建物の改修を迅速に行い、より効率的でネットワーク化された生活スタイルを構築する必要もあります。
What you can do
デジタルを導入する
スマートメーターなどのデジタルツールを駆使した高効率化と低コスト化が、脱炭素な生活の実現への鍵を握ります。
効率化のためのレトロフィット
住宅へのソーラーパネルの設置などは、コストを削減するのみならず、よりサステナブルなエネルギーシステムを構築することにも貢献します。
コロナ禍に学ぶ
リモートワークの急激な増加は、二酸化炭素排出量の多い通勤や出張を前提としてきた社会経済を変える一手となることでしょう。
What this research tells us
リサーチが伝えること
これまでの発想を乗り越える必要性
このレポートで紹介する組織の多くは、いずれも全く異なる組織であり、未来に向けてそれぞれ異なる道筋を見出しています。しかし、いくつか共通したテーマもあります。 おそらく最も重要なのは、現状を乗り越えるために以下の重要な点で一致していることでしょう。
短期的な視野に陥ること
年次損益から個人的な便利さまで、私たちの行動は、目先の短期的な効果ばかりに偏っています。それは長期的な結果を見落とすことを意味しています。
消費の「結果」を忘れること
人々や企業は、自分たちの行動が外部へ及ぼす影響をかえりみず、「最終的な利益」のみに焦点を当てすぎています。
成長には終わりがないと考えること
どんな状況であっても、私たちが「成長」を追求する限り、地球への影響を減らすことはほぼ不可能です。
速いことは常に良いことだと思うこと
ときには迅速さが求められる行動もありますが、多くはそうではありません。人類の行動が加速すればするほど概して破壊を招き、特にその結果を十分に理解していない場合はなおさらです。
サステナブルな世界の構築に向けて、共に動くべきとき
いまの生活をよりサステナブルにするために、手っ取り早い解決策や技術革新はないのかと思うこともあるでしょう。しかし実際のところ、社会のあらゆるレベルにおいて、私たちはいくつものトランジションが必要であることをこのリサーチでは示しています。
また今回のリサーチから、合意形成のプロセスが重要な役割を果たすことも明らかになりました。これまでサステナビリティにまつわる議論では無視されてきた人々の声にも耳を傾け、意思決定を地域の人々やコミュニティにシフトすること。それによって、誰もが未来を自分ごととして想像し、新たなアイデアや視点を議論に取り入れられるようになります。
最終的に、サステナブルな未来はすべての人にとって有効なものでなければなりません。
What you can do
あなたにいまできること
異なる視点で世界を見るためのフレームワーク
このレポートで示されたフレームワークは、私たちの世界、そしてよりサステナブルな未来にとって必要なトランジションへの理解促進に役立つでしょう。
しかしそれ自体が目的ではありません。むしろ、個人、コミュニティ、企業、政府が自然との関係を改善していくために取るべき、様々な行動の出発点となるものです。 またこうした考え方は、複雑で多面的な他の問題にも応用できるでしょう。巨大すぎたり、難しすぎたりして対処しきれない問題も前進できる一手となるはずです。
じっくりと時間をかけて理解していけば、これらのフレームワークは日々の選択や行動の原動力として自然と身につけることができるでしょう。
— Terry Irwin, Director of the Transition Design Institute‘If you really want to work on behalf of sustainable transitions, if you want to ignite positive, systems-level change, you have to change many things about yourself. You have to change your posture, you have to change your attitudes toward collaboration. You have to, I think, revise your ideas.’
もしあなたが、サステナブルなトランジションに身を投じ、システムレベルでのポジティブな変化を起こしたいと願うなら、まず自分の周りの多くのことを変える必要があります。姿勢を正し、コラボレーションに対する態度も改めること。自分の考えをも見直す必要があるということです。